下顎前突 症例
第1症例 治療前 6歳2ヶ月
前歯反対咬合を呈しているこの症例においては、次のような問題がありました。
①下あごが前へ突き出ているという骨格的問題
②歯並びの幅が狭く、歯がやや大きいため、歯の並ぶスペースがやや不足している。
③そのため、少しがたついた歯並びとなる可能性がある。そして、治療をすすめるうちに、次のような新たな問題も出てきました。
④右上の第2小臼歯、第1及び第2大臼歯が出てこないため、咬めない。
治療後 13歳11ヶ月
反対咬合はきれいに改善することが出来ました。上下の歯列ともバランスよく配列され、また、臼歯は大変よく咬み合っているのが分かります。④の問題については、写真(A)に示すように、特殊なSLAを作製し、ゴムで牽引を行いました。大臼歯は大きく、動きにくいのですが、徐々に引っぱり出すことにより、咬合させることに成功しました。顔貌もよくなり、予後も安定しています。
第2症例 治療前 16歳5ヶ月
この女性は下顎骨が大きく前方位のため、強い前歯部反対咬合になっており、また上顎正中部にスペースもあり、外科的矯正も考えられる下顎前突でした。しかし下顎歯列にスペースがあったためこれを利用して下顎前歯を舌側に入れ、チンキャップにより残された下顎骨成長の成長を抑制し、SLAで上顎前歯を前方に拡大して、改善を行う事としました。
治療直後 25歳11ヶ月
症状が著しかったため、長期間かかりましたが前歯部反対咬合は改善し、上顎正中のスペースもそのスペースを左上に移動させブリッジで閉じることにより、閉鎖する事ができました。
治療後 8年8か月 34歳8ヶ月
治療が終了し、長期経過しておりますが、歯列はほぼ安定し、反対咬合の再発も生じておりません。弱い力で治療を行ったため歯肉が下がる事もなく、また歯も健全に維持され、良好な治療結果が得られました。
第3症例 治療前 19歳0ヶ月
強い骨格性の問題に加え、著しい叢生や正中の偏位を伴うほぼ成人の下顎前突の症例でした。この程度の骨格的問題になると手術を併用する方法が一般的かも知れませんが、患者さんの本音としては避けたい方法であり、何とか全体的な改善は可能だろうと思われたため、抜歯を伴う矯正治療として開始しました。
保定終了時 35歳2ヶ月
さすがに骨格的な問題や著しい叢生のために治療期間はかかりましたが、患者さんもよく頑張り、ほぼ良好な歯列にすることが出来ました。しかし本治療法では非常に珍しいのですが上顎犬歯と小臼歯部で歯肉の退縮が生じてしまいました。これはやはり骨格的問題が大きかったためと思われます。しかし歯根の吸収や虫歯の発生は見られず、今後適切なブラッシングに努めれば歯の維持は可能と思われます。
ポストリテンション1年3ヶ月後 36歳5ヶ月
患者さんの希望によりSLAによる1年間の保定後は装置を全て外し、ポストリテンションに入りましたが、1年3ヶ月経過した時点ではほぼ安定していました。
保定終了時の咬合チェックを見ると、やや左右のアンバランスはありますが、臼歯から前歯にいたるまで上下歯の接触があります。